一般社団法人 呼吸研究 RESPIRATION.JP|雑誌「呼吸」by Respiration Research Foundation 


最新号 3巻2号



~~今月の論文(『呼吸』バックナンバーより)~~

呼吸30(3):262―268,2011
講座 ピットフォール
     肺クリプトコックス症
要旨  肺クリプトコックス症は,自然界に広く生息する Cryptococcus neoformans を経気道的に吸入して発症する。その典型的な胸部画像所見は胸膜直下の結節影(±空洞)であるが,その他,浸潤影やスリガラス影,小粒状影など様々な陰影を呈することがあるため,他の肺疾患との鑑別の 1 つとして記憶にとどめておきたい。真菌学的検査や病理組織学的検査などで肺クリプトコックス症と診断をした後には,その基礎疾患(特に HIV 感染)の有無,および肺外感染病巣,特に脳髄膜炎の有無を確認することが重要である。それは,基礎疾患および脳髄膜炎の合併の有無により,推奨される抗真菌薬や治療期間が異なるからである。その推奨治療期間や髄液検査の要否等に関して,改訂 IDSA ガイドラインとわが国のガイドラインとは異なる点も散見され,今後のエビデンスの蓄積が待たれる。また,近年北米太平洋岸を中心に拡大しつつある C. gattii による新たなクリプトコックス症は死亡率が高く, 今後の動向が注目される。


キーワード: Cryptococcus neoformans  脳髄膜炎  改訂IDSAガイドライン  Cryptococcus gattii 
        図1 肺クリプトコックス症の画像所見
A:胸膜直下の結節影,空洞を伴う結節影(70 歳女性,基礎疾患:関節リウマチ,ステロイド服用中)
B:一部 spiculation を伴う結節影(40 歳男性,基礎疾患なし)
C:air bronchogram を伴うコンソリデーション(39 歳男性,基礎疾患なし)
D:スリガラス陰影(78 歳女性,基礎疾患:糖尿病,ステロイド投与中)


~~肺クリプトコックス症の臨床症状は非特異的で,咳嗽・喀痰,胸痛などが認められることもあるが,無症状で健康診断の胸部 X 線異常により偶然発見されることもある。その場合胸部画像所見として,胸膜直下の孤立性もしくは多発性の境界明瞭な結節影(±空洞を伴う) (図 1A)が認められることが多い。鑑別疾患としては原発性肺癌や肺結核などが挙げられるが,結節影が石灰化を伴うことは稀であるため,肺結核との鑑別点の 1 つとなっている。一方,肺腺癌でみられるような spiculation (図 1B)や pleural indentation を伴う場合もあり,画像のみでは鑑別が難しい。胸膜直下に存在し,空洞を有する結節影や石灰化を伴わない結節影では,クリプトコックス症も鑑別疾患の上位に挙げることが勧められる。一方で,一見肺炎様の air bronchogram を伴うコンソリデーションを示す症例もあるため (図 1C),抗菌薬不応の肺炎症例では本症も考慮する必要がある。また,高度の免疫不全症例ではスリガラス影や小粒状影を呈することもある (図 1D)ため,様々な陰影の鑑別疾患の 1 つとして記憶にとどめておきたい。~~

本論文のPDFを閲覧する


What's News /お知らせ
2024.2.15 “ほっと『ひと呼吸』”に私の科学史Wanderings(その1)-序章-及び(その2)-お玉が池種痘所跡(東京大学・医学部発祥の地)-を掲載しました。
2024.1.11 “ほっと『ひと呼吸』”の「スケッチによる旅の思い出」に“木曾路 妻籠宿”を追加掲載しました。
2023.9.12 『呼吸』バックナンバーに、未公開だった『呼吸』サプルメントをPDF化して掲載公開しました。「テーマ」のプルダウンメニューから「サプルメント」、「Asthma club in Sendai」、「Airway Club in Sendai」、「脂質メデイエーター研究集会」、「気道過敏性研究会」、「Onon Forum in TOHOKU」などを選択して検索してください。
2023.6.25 “ほっと『ひと呼吸』”の「くつろぎの時間の風景」に“大島沖から見た富士山”を追加掲載しました。
2023.6.1 “ほっと『ひと呼吸』”の「スケッチによる旅の思い出」に“高知城”と“津城”を追加掲載しました。
2023.2.1 “ほっと『ひと呼吸』”に「松谷名誉園長が案内する京都府立植物園」の特別編「比叡山と京都府立植物園 とくに冬」を掲載しました。
2023.1.30 “ほっと『ひと呼吸』”の「スケッチによる旅の思い出」に“松本城”を追加掲載しました。
2022.11.7 “ほっと『ひと呼吸』”に「松谷名誉園長が案内する京都府立植物園」の新シリーズ“秋”の1回目「コダチダリア」を掲載しました。
2022.7.8 京都の祇園祭といえば、“ヒオウギの花”です。祇園祭とヒオウギについての解説を“ほっと『ひと呼吸』”の「松谷名誉園長が案内する京都府立植物園」に掲載しました。
2022.5.27 “ほっと『ひと呼吸』”に「松谷名誉園長が案内する京都府立植物園」の新シリーズ“梅雨時の花木”を掲載しました。
2022.5.19 “ほっと『ひと呼吸』”に「スケッチによる旅の思い出」を掲載公開しました。
2022.5.9 “ほっと『ひと呼吸』”の「くつろぎの時間の風景」に“「善福寺池」の上を泳ぐ鯉のぼり”を追加掲載しました。
2022.5.8 “ほっと『ひと呼吸』”に「あばた(痘痕)もえくぼ(靨) … ほうこ(奉公)さん …」を掲載公開しました。
2022.4.11 “ほっと『ひと呼吸』”の「くつろぎの時間の風景」に“井の頭池の春”を追加掲載しました。
2022.4.3 “ほっと『ひと呼吸』”の「松谷名誉園長が案内する京都府立植物園」に“キクザクラ(菊桜)”を追加掲載しました。      
2022.3.16 “ほっと『ひと呼吸』”に「松谷名誉園長が案内する京都府立植物園」を掲載公開しました。
2022.2.22 “ほっと『ひと呼吸』”に「ミリック-エミリ教授を偲んで」を掲載公開しました。
2022.2.18 “ほっと『ひと呼吸』”に「高尾山からみる富士山」を掲載公開しました。
2022.2.18 “ほっと『ひと呼吸』”の掲載を開始し公開しました。
2020.6.11 “今月の論文(『呼吸』バックナンバーより)”の掲載を開始します。
2020.4.1 本日より、本情報サイトの 管理・運営をインタージョイン株式会社が担当します。
2020.3.31 本日をもって一般社団法人 呼吸研究の法人組織を解散し活動を停止します。
2019.11.20 『呼吸』eレポート3巻2号を本日公開しました。
2019.5.20 『呼吸』eレポート3巻1号を本日公開しました。
2019.5.8 『呼吸』eレポート3巻1号を5/20月曜日に公開する予定です。
2018.11.21 『呼吸』eレポート2巻2号を本日公開しました。
2018.11.16 『呼吸』eレポート2巻2号を11/21水曜日に公開する予定です。
2018.9.25 『呼吸』バックナンバーをダウンロードするために現在ご使用されているユーザーIDとパスワードの有効期限は、本年12月末となっています。有効期間延長の手続きをお願いします。
2018.6.29 『呼吸』eレポート2巻1号に“解説 臨床”「臨床プロテオゲノミクスによる肺がんのプレシジョン医療」を追加公開しました。
2018.5.23 『呼吸』eレポート2巻1号を本日公開しました。
2018.5.19 『呼吸』eレポート2巻1号を5/23水曜日に公開する予定です。
2017.12.15 『呼吸』eレポート1巻2号に“総説”「新たな肺がん診断・治療戦略 ―PDTの可能性―」を追加公開しました。
2017.12.08 『呼吸』eレポート1巻2号に“解説 臨床”「日本人を対象としたCOPDスクリーニング質問票」を追加し、本日公開しました。
2017.11.29 『呼吸』eレポート1巻2号を本日公開しました。
2017.11.22 『呼吸』eレポート1巻2号を11/29水曜日に公開する予定です。
2017.11.06 『呼吸』eレポートのISSN登録手続きが完了しました。ISSN は、2433-5436となります。
2017.05.30 『呼吸』eレポート閲覧画面にズーム機能を追加しました。論文各ページの左上の虫眼鏡をクリックするごとに拡大率が変化します。
2017.05.24 『呼吸』eレポート創刊号を公開しました。
2016.02.22 事務所を移転します。現在の神田須田町から3月1日に、文京区本郷2丁目に移ります。引っ越し作業に伴い、メールが一時使用できません。また、電話も03-3257-6931から 03-5844-6530に変わります。
2015.12.16 『呼吸』Vol.34 No.12 が発刊されました。 12月号には、第43回箱根呼吸討論会記録がsupplementとして付いています。なお、『呼吸』はこれで休刊になります。
2015.11.17 12月15日発刊予定の『呼吸』Vol.34 No.12 で休刊になります。12月号には、第43回箱根呼吸討論会記録がsupplementとして付いています。
2015.11.16 『呼吸』Vol.34 No.11 が発刊されました。
2015.10.15 『呼吸』Vol.34 No.10 が発刊されました。
2015.10.02 『呼吸』はVol.34 No.12 で休刊となります。
2015.09.15 『呼吸』Vol.34 No.9 が発刊されました。
2015.08.17 『呼吸』Vol.34 No.8 が発刊されました。
2015.07.15 『呼吸』Vol.34 No.7 が発刊されました。
2015.06.15 『呼吸』Vol.34 No.6 が発刊されました。
6月号では、コロナウイルスの感染症 中東呼吸器症候群(MERS)について、「総説:いま、警戒すべき輸入ウイルス感染症」で解説されています。執筆は長崎大学熱帯医学研究所新興感染症学分野の 安田二朗先生です。
2015.06.03 『呼吸』Vol.34 No.6 が15日に発刊されます。長崎大学野の 安田二朗先生により中東呼吸器症候群(MERS)について、「総説:いま、警戒すべき輸入ウイルス感染症」で解説されています。
2015.05.15 『呼吸』Vol.34 No.5 発刊
2015.04.15 『呼吸』Vol.34 No.4 発刊

一般社団法人 呼吸研究解散のご案内
拝啓
 平素は一般社団法人 呼吸研究の活動に格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。 さて、一般社団法人 呼吸研究は本年3月に法人組織を解散し活動を停止することになりました。
 滝島任先生が初代編集委員長として、1982年9月に創刊された雑誌『呼吸』は、読者の皆様やご寄稿いただいた先生方など大変多くの方々からのお力添えを賜り、呼吸器学の月刊専門誌として、基礎から臨床にいたるまでの最新知見を読みやすい誌面でお伝えしていくことを目標に、刊行を続けてまいりました。その『呼吸』が諸般の事情により、2014年末に34巻12号で冊子体としての発行を休止いたしました。
 その後、『呼吸』編集委員会は、呼吸器関係の学術誌が限られた発行状況にあることを考慮して、『呼吸』バックナンバーのWeb上での閲覧を持続するとともに、電子図書『呼吸』eレポートの発行を行ってまいりました。
 しかし諸般の状況検討により、今後の活動継続は困難と判断し、法人解散の手続きを関係者の体力的に余力があるうちに実施することを編集委員会の総意として決定しました。
 法人解散後は、一般社団法人 呼吸研究が有していました『呼吸』等発行図書の著作権を公益財団法人 日本呼吸器財団に承継していただき、WEB上での “『呼吸』バックナンバー検索・閲覧システム”の維持運営と発行済『呼吸』eレポートの閲覧公開を継続することにしています。

 長きにわたり『呼吸』と一般社団法人 呼吸研究の活動にご支援賜りました皆様方には厚く御礼申し上げます。誠にありがとうございました。
 末筆ながら、皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。
敬具

2020年2月 
一般社団法人 呼吸研究
事務局